SpectraBandとは
SpectraBandは、Sound DevicesのAstralシリーズに搭載された、他社製品の追随を許さない圧倒的な広帯域チューニング機能です。169MHzから1525MHzにわたる極めて広い周波数範囲をカバーし、サウンド・プロフェッショナルに数多くのメリットを提供します。
※日本国内ではTVホワイトスペース帯(470-714MHz)、特定ラジオマイク専用帯(710-714MHz)、1.2GHz帯(1240-1260MHz)に対応
SpectraBandの利点
より多くの使用可能周波数
特定の場所においても利用可能な周波数の選択肢が飛躍的に増えるため、空きスペクトルが不足している環境下でも、安定した運用チャンネルを確保することが可能です。
世界中で共通の機材を使用可能
地域ごとに異なる周波数帯の機材を個別に用意する必要はありません。1台の機材で世界各国の運用に対応できるため、機材管理の効率化と大幅なコスト削減に直結します。
海外での運用が容易
Astralシリーズは、各国で合法的に使用可能なすべての周波数帯へアクセスできます。国際的なツアーや海外ロケにおいても、法規制を遵守しながら迅速にセットアップが行えます。
強力な干渉耐性
高度なハードウェア・フィルタリング技術により、地上デジタル放送(DTV)や近隣の送信機、双方向無線といった強力な干渉信号から受信システムを確実に保護し、クリアな音声を維持します。
SpectraBandの技術とフィルタリング
SpectraBandの驚異的なチューニング範囲と高い信頼性を支えるために、Sound Devicesのエンジニアリングチームは数多くの最先端技術を投入しました。その中核を成す主要なコンポーネントを紹介します。
ブリックウォール型 SAW 前置フィルター
不要な帯域を極めて急峻にカットする「ブリックウォール(煉瓦の壁)」特性を備えたSAWフィルターを採用。運用帯域外の強力な電波干渉を入口で遮断し、受信システムの安定性を劇的に向上させています。
広帯域ローカルオシレーター(LO)
169MHzから1525MHzという広大な範囲をカバーしながら、極めて低い位相ノイズを実現したオシレーターを搭載。安定した周波数変換により、長距離伝送時でもクリアなオーディオ信号を維持します。
広帯域モジュレーター / デモジュレーター
超広帯域に対応し、高い直線性を誇る変復調セクションにより、複雑な電波環境下においてもデジタルオーディオデータの欠損を最小限に抑え、原音に忠実な再現を可能にします。
高ダイナミックレンジ・低ノイズアンプ(LNA)
極めて微弱な信号を増幅しつつ、アンプ自身が発生させるノイズを極限まで低減。広いダイナミックレンジを確保することで、遠距離からの信号や、ノイズの多い環境でも圧倒的なS/N比を実現しました。
フィルタリングの重要性
RFシステムにおいて、適切なフィルタリングは優れたパフォーマンスを得るために不可欠です。信号経路にアンプを配置する場合、その直前には必ずフィルターを挿入する必要があります。これを怠ると、使用環境によってはアンプの過負荷や歪みが発生し、システムの性能が低下します。この歪みは、ユーザーにとっては「受信エリア(リセプションレンジ)の狭まり」として顕現します。
オーディオシステムであれば、アンプのクリッピング(歪み)は聴感上すぐに気づくことができ、対策も容易です。しかしRFシステムの場合、見た目や聴こえ方には一見問題がないように思えても、水面下で問題が進行しているケースが少なくありません。その結果、音の歪みとしてではなく、受信可能範囲の低下という形で不具合が現れるのです。
オーディオシステムにおけるバンドパスフィルターがノイズ対策に有効であるのと同様に、高品質なRFフィルターはアンプの不具合を防ぎ、システム全体の性能を最大限に引き出します。特に、目的のキャリア信号を損なうことなく、アンプの直前に急峻(きゅうしゅん)なカットオフ特性を持つバンドパスフィルターを配置できるかどうかが、RFシステムの性能を大きく左右します。
上の図は、Astral ARX16受信機に搭載された「ブリックウォール型SAWフィルター」と、市場で高く評価されている従来のトラッキングフィルター2種との比較を示しています。黄色のトレースがAstral ARX16のSAWフィルター(中心周波数 573 MHz)、青色が競合製品1、緑色が競合製品2です。グラフからも明らかなように、Astral ARX16のフィルターは理想的なブリックウォール(断崖)状のレスポンスを示し、603 MHzにおいて45 dB以上の減衰量を確保しています。これに対し、競合製品1はわずか約2 dB、競合製品2は約12 dBの減衰にとどまります。このプロットこそが、Astral ARX16が強烈な干渉源の近傍でも安定した性能を維持できる理由を明確に物語っています。仮に603 MHzに強力な干渉波(DTVや他の送信機など)が存在したとしても、SAWフィルターがそれを大幅にカットするため、受信性能に影響を与えることはありません。
さらにAstral ARX16は、A/Bアンテナ入力部に40以上の固定SAWフィルターを組み込んでおり、世界各国のPMSE(舞台音響・番組制作)やDTVワイヤレス帯域に幅広く対応しています。この高精度なブリックウォール型SAWフィルターが、帯域外の強力な干渉波をシャットアウトし、極めて安定した受信環境を提供します。
ローカルオシレーター(LO)と変復調技術
ワイヤレスマイクの心臓部であるモジュレーター(変調器)と、それを駆動するローカルオシレーター(LO)には、169MHzから1525MHzという広帯域で微塵も揺るがない安定性が求められます。
最新のFPGA設計と低ノイズLO
Sound Devicesは最新の「低電流・低位相ノイズLO」と「FPGA」を採用。かつては不可能とされていた超広帯域での安定動作を実現しました。受信機側では、実績ある「デュアルダウンコンバータ・スーパーへテロダイン方式」を採用。部品数は増えますが、近接信号の除去能力において他の方式を圧倒し、確実な動作距離の向上に貢献しています。
低ノイズかつ高IP3のLNA(低雑音アンプ)
RF信号経路の最初に位置するLNAは、音声システムにおけるマイクプリアンプと同様、システム全体のクオリティを決定づける極めて重要な素子です。
究極の静寂:ノイズフィギュア(NF) 0.3 dB
LNAの静かさはNF(ノイズフィギュア)で数値化されます。Astralシリーズはわずか0.3dBという驚異的な低NFを実現。これは静かなマイクプリが微細な音を捉えるのと同様に、極めて遠距離からの微弱な信号の受信を可能にします。
圧倒的なヘッドルーム:出力IP3 +39 dBm
アンプの過負荷耐性を示すIP3(3次インターセプトポイント)においても、最新のE-pHEMTトランジスタの採用により+39dBmという高い数値を達成しました。近くに強力な送信機がある環境でも歪みが発生しにくく、十分なヘッドルームを確保することで、安定した通信品質を約束します。
結論
Sound DevicesのAstral製品ラインは、ローカルな現場から世界ツアーまで、場所を選ばず最適な運用を可能にします。電波スペクトルが過密化する現代において、この圧倒的なチューニングレンジと技術的裏付けは不可欠です。
一般的な470〜608MHzのUHF TVバンドに留まらず、その上下に広がる広大な周波数帯域を自由自在に活用できるAstralシリーズは、干渉の少ない「クリーンな場所」を見つけ出せる世界で唯一のデジタルワイヤレスシステムです。

