CASE導入事例

TONER 様

カフェバー&レストラン「TONER」にMartin AudioとPowersoftが導入

カフェバー&レストラン「TONER」にMartin AudioとPowersoftが導入

事業内容
TONERは東京・目黒川沿いに位置する、weave & bondをコンセプトに掲げたカフェバー & レストラン。飲食利用はもちろん、音楽イベントや各種パーティー、POP UPショップなどロケーションを活かした多彩なイベントを通じ、さまざまな分野で活躍する人々が集い、つながり“織り交ざる空間”を提供するウィービングスペース。
導入製品
Martin Audio社 Blackline X10、Blackline X8、Blackline X115、Powersoft社 Quattrocanali 1204 DSP、Mezzo 604AD、Mezzo 322AD、WM touch、NETGEAR社 M4250-10G2F-PoE

目黒のカフェバー&レストラン「TONER」に、Martin AudioのBlacklineシリーズと、PowersoftのQuattrocanaliおよびMezzo、さらにタッチパネルWM Touchを組み合わせた音響システムを導入いただきました。

TONERの開業4周年を記念して4月に開催されたDJイベントにて、システム導入に携わられた、オーナーの下川貴洋氏、プロデュースを担当したサウンドアーティストのAOKI takamasa氏、サウンドエンジニアの和田真也氏、そして当日出演されていたサウンドアーティストAlbino Soundこと梅谷裕貴氏にTONERの音響システムについてお話を伺いました。

—TONERは“コレクティブスペース”と紹介がありましたが、具体的にどういうコンセプトの場所なのか教えてください。

TONERオーナー・下川  まず、僕たちがTONERを立ち上げたきっかけですが、僕自身は本業で映像の仕事をしていて、まわりにも飲食店や料理、他にもいろんな分野でそれぞれのスキルを持っている友人がたくさんいました。そういった人たちが集まって交わり合える空間をつくりたいと思ったのが始まりです。

「TONER」という名前は、業務用印刷機などで使われるインクセットが由来です。店はその外側のカートリッジのようなもので、ここに集まってくるお客さん自身やスタッフの独自の“色”が混ざることによって生まれる、瞬間ごとの彩りを楽しんでもらう。そんなコンセプトでこの場所を運営しています。

なので、カフェやバーとしての飲食だけでなく、今日のように音楽イベントを開催したり、店内でPOP UPショップを展開したりと、さまざまなかたちで空間を活用しています。

カフェバー&レストラン「TONER」

みんなとも話をしていたのですが、面白い人たちが集まって集合体になっていくことで、さらにいろんな人同士がつながっていくんですよね。今日も、遊びに来ている子どもをきっかけにパパママ同士がつながったり、アーティスト同士の出会いが生まれたりしています。

4周年という節目を迎えた今日から、これまで掲げてきた集合体を意味する“コレクティブスペース”という考え方を一歩進めて、“ウィービングスペース”という「人と人が織り合い、混ざり合っていくような場所」として、さらに深めていきたいと思っています。

また、音楽がしっかり鳴っている中でも、お客さん同士が自然に会話できて、つながっていけるような空間を目指しているので、音響には特にこだわりました。絶対に信頼できる人にお願いしたいという想いがあって、僕の学生時代からずっと憧れのヒーローでもあるAOKIさんに音響設計をお願いしました。

TONER 4th anniversaryイベントの様子(DJブースと広い空間)

TONER 4th anniversaryイベントの様子(DJブースと広い空間)

—スピーカーにはMartin Audioを、パワーアンプにはPowersoftを採用いただきましたが、導入のきっかけを教えてください。

サウンドアーティスト・AOKI takamasa  今回TONERに導入されたMartin AudioとPowersoftの音響システムは、もともと僕がいつも音響をお願いしているエンジニアの和田さんから紹介してもらったものなんです。実は以前、大阪の知人のお店にも、和田さんがこのシステムを導入したことがあって、そこで初めてその音を聴いたときに、すごく良い音が鳴っていたんですよね。

レンジが広くて密度もあって、解像度も高い。でも全然うるさくないし、音量を上げなくてもパンチがしっかりあって、しかも立体感やシャープさもある。「これは何事や…!」と思いました(笑)。

そのときに強く感銘を受けていたので、今回TONERの音響をアップグレードしたいという話が下川さんからあったときに、すぐに和田さんに相談して、Martin AudioとPowersoftを組み合わせる方向で進めることになりました。

和田さんは、いろんな要素を組み合わせていい感じに仕上げてくれるのが本当に上手な人で、僕が「こういう音が欲しい」というざっくりした要望を伝えて、もうちょっとこうしてほしい、ああしてほしいと投げると、それを彼が現場でしっかりチューニングしてくれるんです。

導入前には“テスト走行”みたいな感じで、丸一日、13時間ぐらいDJをやらせてもらいました。そのとき和田さんも現場に来てくれて、僕がいろんなスタイルの音楽をかけながら、それに合ったマッピングを一緒に調整していきました。そのプロセスを経て、最終的なシステムが完成しました。

サウンドアーティストAOKI takamasa DJパフォーマンスシーン@TONER

サウンドアーティストAOKI takamasa氏のDJパフォーマンスシーン@TONER

—Martin AudioとPowersoftにどのような印象をお持ちですか?

エンジニア・和田  ロック系のPAなどで大音量を求める現場であれば、他にも価格の安い優れたスピーカーはあると思います。ただ、今回プロデュースを担当されたAOKIさんが選定する音楽には、環境音や微細な電子音といった、小さな音の中に音楽的に重要な要素が多く含まれているものが多い。そういった楽曲では、ピーキーなインパクトよりも、音楽の細部までしっかりと聴けるシステムが最適だと考えました。

実際、今回の導入で、音量を上げなくても音楽のニュアンスがしっかりと伝わる空間になったと感じています。ピーキーな特性を持つスピーカーだと、一部の帯域や楽器の音が強調されてしまい、他の音が埋もれてしまうことがあります。Martin Audioのスピーカーはピーキーな部分が他の楽器の音の邪魔をすることがなく、そこが凄く気に入っています。

Martin Audio Blackline X8(小型2ウェイ・パッシブシステム)

Martin Audio Blackline X8(小型2ウェイ・パッシブシステム)

和田  Powersoftについては、Martin Audioを知るよりも前から、その音の良さには注目していて、「とにかく音質の優れたアンプ」という印象をずっと持っていました。中でも、Quattrocanaliのサウンドクオリティの高さと、MezzoのI/O拡張性の柔軟さは本当に素晴らしいと思っています。

実際、Martin Audio以外のメーカーのスピーカーでもPowersoftを使ってきましたが、ダンピングの良さや音の立体感には一貫して優れた印象があります。そしてMartin Audioのスピーカーと組み合わせることで、小さな音でもよりクリアに聴こえるという特性が際立ちます。そういった点も含めて、Martin AudioとPowersoftの組み合わせは非常に相性がよく、TONERのような空間には最適なシステム構成だと考えました。

Quattrocanali 1204DSP / Mezzo 604AD & 322AD / NETGEAR M4250-10G2F-PoE+

NETGEAR M4250-10G2F-PoE+(画像上1段)
Powersoft Quattrocanali 1204DSP / Mezzo 604AD & 322AD(画像下2段)

—各エリアの音響操作を自由自在に行える専用のゾーンコントローラ「WM Touch」を導入いただきましたが、使い勝手はいかがですか。

下川  TONERは毎日ライブやDJパーティーを開催しているわけではないので、PAエンジニアが常駐しているわけではありません。そうした中で、タッチパネルのWM Touchの存在は非常に大きな助けになっています。

店内の各スペースの混雑状況や、お客さん同士の会話の音量といった、そのときの雰囲気に応じて、お店のスタッフ自身が簡単に音量調整のオペレーションを行えるというのは、日常的な運用において大きなメリットです。

ゾーンコントローラ「WM Touch」

各エリアの音響操作を自由自在に行える専用のゾーンコントローラPowersoft「WM Touch」

—音響システムを組むにあたり、特に意識した点はありますか?

和田  システムを構成するにあたってまず意識したのは、TONERが飲食店であるという点です。普段はBGMを流しているので、その音があまりお客さんの聴覚に“直撃”しないように配慮する必要がありました。

ただ、下川さんの「音楽にもっとフォーカスを当てたいから、新しいシステムを導入したい」という明確な方向性もあって。最初はもっと思い切って、スピーカーを天井吊りにして音を広く散らすような設置も考えていたんですが、青木さんとも話す中で、「しっかりとお客さんに音楽を“聴かせる”ことも大事だよね」という意見が一致しました。

そこで、BGMとして空間に溶け込むだけでなく、必要なときには音楽の主張もしっかりできるシステム構成に調整して、運用できるようにしました。

Martin Audio Blackline X10

Martin Audio Blackline X10(小型2ウェイ・パッシブシステム)

—「Partyモード」と「Dailyモード」の2種類のサウンドセッティングを使用されているとのことですが、詳しく教えてください。

下川  今回のようなDJイベントなどの音楽イベント用に「Party(パーティー)モード」、そして普段のカフェやバー営業時の「Daily(デイリー)モード」、この2種類のサウンドセッティングを和田さんと青木さんに作ってもらいました。現在は、その2つのモードを切り替えながら運用しています。

お二人が作り上げてくれた音の設計をベースに、シーンに応じてフレキシブルに切り替えができるように、というリクエストをもとに設定していただいたモード構成になっています。

Powersoft WM Touchは「Partyモード」と「Dailyモード」の2種類のモードを用意

PowersoftのタッチパネルWM Touchは「Party」と「Daily」の2種類のモードを用意

—Martin Audioスピーカーの気に入っている点やおすすめしたいポイントがあれば教えてください。

AOKI takamasa  僕らが普段慣れ親しんでいるのは、クラブの音響システムなんですけど、Martin Audioのスピーカーにはそれとはまた違ったシルキーさと解像度があって、そこに僕も梅谷さんもすごく感動しています。

何がすごいって、小さな音量でも音がしっかり“存在”しているんですよ。普通は、音量が小さいとそれだけ存在感も薄れてしまうものなんですけど、Martin Audioの場合はそうじゃない。音が小さくても、しっかりそこに“在る”感じがある。そして尚且つ、耳にうるさくない。それが感動です。

サウンドアーティスト・梅谷裕貴  特に管楽器や弦楽器のサウンドの伸びと距離感がすごく際立っていると感じました。アンビエント系の音源をかけているときに思ったのが、生楽器の音、たとえば生のドラムの粒立ちや、ストリングスの伸び、音の余韻の消え方、逆に音が入ってくる瞬間の存在感、それらがとてもリッチに感じられるんです。

生楽器の質感がしっかり伝わるのはもちろんですが、電子音楽でも全体の解像度の高さが気に入っています。クラブで聴くようなパンチの強いサウンドシステムとはまた違って、感嘆するようなリスニング体験ができるというのが、率直な印象ですね。

Albino Sound(梅谷裕貴)氏のDJパフォーマンスシーン

Albino Sound(梅谷裕貴)氏のDJパフォーマンスシーン@TONER

—Martin Audioのスピーカーは、どのような会場やユーザーにマッチすると思われますか?

AOKI takamasa  やはり一番のポイントはサウンドクオリティですね。そのクオリティの高さをしっかり理解できる人、あるいはそういった音を求めている方におすすめしたいです。「音の良さ」がちゃんと伝わる環境や人がいる場所でこそ、Martin Audioの良さが最大限に活きると思っています。

和田さんとはこれまで何度も一緒に仕事をしてきたんですが、彼は現場でもよくMartin Audioを使っていて。たとえば店舗などの現場で音響を担当した際、他のエンジニアさんが入ったときには音の苦情が来ることがあるのに、和田さんのときはめっちゃ音が鳴ってるのに苦情が来ないっていう話をよく聞くんです。

それってつまり、過度にボリュームを上げなくても、Martin Audioのスピーカーからは「ちゃんと伝わる、良い音」が出ているということなんだと思います。

—音響システム導入後、お客さまの反応はいかがですか?

下川  音響に詳しくないお客さんでも、「音がすごくきれいになった」とか、「けっこう音量が出てるのに全然会話できるね」と言ってくれることが増えました。あと、音楽好きの人たちが以前よりも多く集まってくれるようになったのも大きな変化ですね。

これまで音響の話をしたことがなかったお客さんからも、「あれ?音響変わりました?」みたいな会話が自然に生まれるようになったり、いわゆる音楽フリークのような方たちも、しっかり反応してくれているのを感じます。

音楽目当てでない方でも快適に過ごせて、なおかつ感度の高い人にはしっかりフックになる、そんな空間を目指していたので、まさに狙い通りの反応をいただいている実感があります。

TONER