CASE導入事例
ロイヤル・フィルハーモニック・コンサート・オーケストラ(国:イギリス)

TiMax、ステレオPAでオーケストラの音像を自在に操るライブ音響における新たな挑戦
- 事業内容
- ロンドンのBSTハイド・パーク・フェスティバルで行われたオーケストラの公演
- 導入製品
- Martin Audioサウンドシステム、TiMax SoundHub
従来のPAでオーケストラの音像を忠実に再現
先日のロイヤル・フィルハーモニック・コンサート・オーケストラの公演で、画期的なライブ空間オーディオが実現しました。従来のフェスティバル用PAシステム(標準的なレフト/ライトのメインシステム)を使用しながら、オブジェクトベースの「TiMax」ミックスによって、オーケストラの配置を忠実に再現したのです。
この画期的な試みは、ロンドンのBSTハイド・パーク・フェスティバルで行われ、Solotech UK社がMartin Audioのスピーカーシステムを提供しました。音響デザイナーであり、FOHミキシングエンジニアのソノスフィア社フィル・ライト氏は、従来のコンソールマトリックスミキサーを「TiMax SoundHub」ディレイマトリックス空間プロセッサーに置き換えることで、この偉業を成し遂げました。一般的なステレオのメインシステムに、フロントフィルとディレイという構成の制約の中で、彼はライブの屋外環境における空間オーディオの可能性を再定義しました。
「通常、どのライブでも、観客のごく一部しかステレオのスイートスポットに入ることができません」と、ライト氏は語ります。「私たちはその体験を広げたかったのです。より多くのスピーカーを追加するのではなく、TiMaxの強力な機能を活用して、標準的なフェスティバルPAで実現しました。」

空間オーディオの仕組みと効果
TiMaxのプロダクト&ソフトウェアマネージャーであるダン・ヒゴット氏は、スタジオでステージレイアウトの空間レンダリングを作成し、新しい「TiMax Scaling Surfaces」機能を使ってBSTのFOHにあるTiMax SoundHubにデータを転送しました。
TiMaxは、オーケストラの各マイクまたはマイクグループを個別の「オブジェクト」として認識し、マトリックス出力からPAのメイン、フィル、サブ、ディレイといった各セクションに直接送出しました。各入力オブジェクトを時間とレベルベースで制御することで、ミキシングポジションだけでなく、より広い観客エリア全体で、演奏の音響マップを非常に正確に再現しました。
ライト氏は、「メインスピーカーでのレベルベースのパンニングはほとんど行いませんでした。ディレイベースの空間的キューを用いることで、通常スイートスポットとされるエリア外でも、音像はクリアでリアルなままでした。これは私たちが期待していた以上の成果です」と述べました。

圧倒的な明瞭さと臨場感
このセットアップの際立った特長の一つは、コーラスの音像です。100以上の入力(必要に応じてグループ化しつつ、ほとんどは個々の音源として扱われた)をTiMaxが処理することで、通常のステレオミックスでは実現できない空間的な分離と明瞭さが得られました。「PAの存在が消えたようでした」とライト氏は付け加えました。「奥行きも幅も完全に再現され、コーラスは音の滲みや被りがなく、まさに本来あるべき場所に聞こえました。」
空間化されたセットアップは、ミキシング作業にも予期せぬ精度をもたらしました。 「ステレオが引き起こすマスキングがなくなります」とライト氏は説明します。「まるで標準画質から高画質に変わるような感覚です。突然、すべてのディテールが重要になります。3本のフルートの間でも、それぞれの音色の違いを反映させるために個別にEQを調整する必要がありました。」
ステージ右端に置かれたドラムキットのような極端な配置でさえも、モノラルに潰れたり、片側に偏ったりすることなく、空間的なサウンドステージ内でその整合性を保ちました。ライト氏によると、「一度その場での音を聞いてしまうと、これまでの“ごまかし”の配置が浮き彫りになりました。そこで、すべてを実際の配置に戻してみたところ、そのまま機能したのです。」
ダン・ヒゴット氏も、「TiMaxがこのレベルの明瞭さとリアリズムを生み出すことは分かっていました。このイベントは、特殊なマルチハングやサラウンドシステムを必要とせず、忠実度を損なうことなく、本物のオーケストラの空間化をフェスティバルの環境にもたらすことができることを証明しました」と述べました。
ライト氏は、「これはギミックではありません。ステージ上のフルオーケストラが実際に存在しているかのように聴くためのものです。そして今、私たちはそれをレフト/ライトのPAでも実現できるようになったのです」と締めくくりました。

ロイヤル・フィルハーモニック・コンサート・オーケストラの公演で、TiMax SoundHubプロセッサーを使用し、一般的なステレオPAシステムで画期的な空間オーディオが実現されました。これにより、オーケストラの配置を忠実に再現し、広い範囲の観客に自然でクリアな音像を提供することが可能になりました。この技術は、特別な機材を追加することなく、ライブ会場での音響体験を大きく向上させるものです。