CASE導入事例

ANTIKNOCK 様

老舗ライブハウス新宿「ANTIKNOCK」にMartin Audio TORUSが日本初導入

老舗ライブハウス新宿「ANTIKNOCK」にMartin Audio TORUSが日本初導入

事業内容
1985年オープンの老舗ライブハウス
導入製品
Martin Audio社 TORUS T1215(メインスピーカー)、SXCF118(サブウーファー)、iKON iK42(パワーアンプ)

1985年のオープン以来、パンク/ハードコアの聖地として知られる新宿「ANTIKNOCK(アンチノック)」は、数々の人気バンドを輩出してきた国内でも有数の歴史を誇るライブハウスです。そんなANTIKNOCKに今春、Martin Audioの新しいラインアップとなるTORUSが国内初導入されました。

店舗を運営する「Hardaway Corporation」様、設計・施工を手掛けた「エンター・サンドマン」様にお話を伺いました。

「コロナ禍で直面したライブハウスの危機には、アーティストが中心となってドネーションのためのTシャツ販売を手伝ってくれ、感謝しかない。」と話すのは、店舗を運営するHardaway Corporation代表の関川氏です。

「ANTIKNOCK」としてお返しできることはなんだろうと考えたとき、真っ先に浮かんできたのがスピーカーの改修だったといいます。

Martin Audio TORUSが導入されたANTIKNOCKのステージは、以前に比べ、左右合わせて1m弱ほど広がったという

Martin Audio TORUSが導入されたANTIKNOCKのステージは、以前に比べ、左右合わせて1m弱ほど広がったという。

元々あったスピーカーは中~長距離向けで非常に大きく、ステージが狭く見えてしまうということ、またライブを通して低音の解像度にも問題を感じていたといいます。

「多ジャンル」や「小型化」、「システムの安定化」をキーワードに敢行されたスピーカー入れ替えに際し、プランニングを担当したエンター・サンドマンの橋本氏はこう語ります。

「ANTIKNOCKさんとは10年以上のお付き合いになりますが、今回のご提案にあたっては、出演するバンドの傾向を踏まえたお店の色味、ハコの形状や矩体の構造、そしてスピーカーの大きさや性能を総合的に考慮し、プランニングを進めました。
このハコに合った短~中距離をしっかりカバーできるモデルに変更するというコンセプトにマッチしたのが、ちょうど新しくラインアップされたばかりのTORUSでした。」

頑丈なスピーカー台を用い高さを出すことで、満員のフロアのお客さんの頭を超えて後方にもしっかりと音を届けることができる。後方のオペレーターの方も以前と比べミックスがしやすくなったという。

頑丈なスピーカー台を用い高さを出すことで、満員のフロアのお客さんの頭を超えて、後方にもしっかりと音を届けることができる。

導入されたのは、TORUSシリーズのメインスピーカー「T1215」とサブウーファー「SXCF118」が片側2/2というシンプルな組み合わせです。積んだ状態での高さも綿密に計算し、音質面でもサイズの面でも最適な構成になったと橋本氏は言います。

TORUSには35mmボイスコイルの高域ドライバーが3つ搭載されており、ANTIKNOCKの出演バンドに多いシャウト系やラウド系のような、力強いハイが必要な場面に特にマッチし、ボーカルの明瞭度の向上にも寄与しています。

客席フロアの柱によるせり出し、フロア後方の床が20㎝上がっている様子がわかる。

客席フロアの柱によるせり出し、フロア後方の床が20㎝上がっている様子がわかる。

ANTIKNOCKの客席フロアには迫り出している左右の柱と天上に渡された梁があり、また客席後方の床が上がっているため、スピーカーとして間口は取りたいけれど、なるべく内に寄せなければならないという課題がありました。

TORUSはその点、ローとハイのドライバーの配置を反転させることができるので、ハイをLRとも内側にした設置が可能で、どちらの明瞭度も保ちつつ、間口をなるべく広く取ることができました。

シミュレーションにはMartin Audioの新しいソフトウェアDISPLAY 3が活躍。ここで明らかになった細かい特性の違いを反映させることで、より良いシステムが提案できたといいます。

Martin Audioの専用アンプ「iKON iK42」はある程度突っ込んでもリミッターがきちんと働くことが安心感につながっているという。

Martin Audioの専用アンプ「iKON iK42」は、ある程度突っ込んでもリミッターがきちんと働くことが安心感につながっているという。

「TORUSにはもう一つ特徴があり、ハイの水平方向の指向角を30°と45°にワンタッチで変えられるようになっています。この現場のように、壁側を広くすると途中のせり出しに当たってしまい、音が濁ってしまうような場合でも、指向角の調整によって改善することが可能です。DISPLAY 3は、TORUSで可能となった水平方向の特性の変化も検証できるようになっています。」と語るのは、オーディオブレインズのエンジニア太田氏です。

またお店が今後の展望として掲げる多ジャンルへと対応するため、「lake」を間に挟むことでジャンルごとに適切な音場に調整できるようになっており、ジャンルごとの特性の切り替えはお店の方が行うことができます。

11月に開催されたANTIKNOCKの周年イベントでは、フットモニター「XE300」、サイドフィル「XD12」、フロア後方用のディレイスピーカーとして「XD15」がデモ導入された。

11月に開催されたANTIKNOCKの周年イベントでは、フットモニター「XE300」、サイドフィル「XD12」、フロア後方用のディレイスピーカーとして「XD15」がデモ導入された。

「ANTIKNOCKは激しいバンドが多いライブハウスでもあり、総じて音も大きめで提供することが多いのですが、このスピーカーに替えてから、音がクリアになってオペレートしやすいと感じます。お客さんからは「すごい迫力だったけど、耳は疲れなかった」といった声が届いています。うちらしい迫力のある音を、きれいに打ち出せるのはすごく嬉しいですね。」と語るのはオペレーターを務める國井氏です。

「ライブハウスというものが、ある種のカルチャーやネームバリューだけでは生き残れない時代になっていることを痛感しています。音響システムは、その意味でも強力な武器です。当店では今回、いろいろなニーズに対応できるシステムが導入されましたので、今後は我々スタッフも努力してライブシーンを一層盛り上げていきたいと思います。」と店長の柳澤氏はこう締めくくりました。

前列:左からHardaway Corporation チーフ・エンジニアの國井氏、同社代表の関川氏、店長の柳澤氏、後列:左からエンター・サンドマン 松浦氏、同社代表の土橋氏、橋本氏、オーディオブレインズ 営業の山田、エンジニアの太田

前列:左からHardaway Corporation チーフ・エンジニアの國井氏、同社代表の関川氏、店長の柳澤氏、後列:左からエンター・サンドマン 松浦氏、同社代表の土橋氏、橋本氏、オーディオブレインズ 営業の山田、エンジニアの太田

編集後記

コロナ禍で延期となり、「REVENGE OF ANTIKNOCK 35th」と題して11月に開催された周年記念に参加させていただきました。演者の皆さんの迫力、そして観客の皆さんとの一体感に圧倒され、本当に愛されているライブハウスなんだなということを、肌で感じることができました。

またインタビューでは、以前使用されていたスピーカーをとても大事にされていたことが伝わってきました。TORUSがこれからも続いていくANTIKNOCKの歴史の中で、愛されるスピーカーになっていって欲しい、と強く思いました。

「新しいスピーカーのおかげで、どんな音楽にも対峙できる環境が整った。ジャンルを問わず、いい音楽であれば何でもやってほしい。」と話されていた代表の関川様。これからも進化していくANTIKNOCKと重なっていく歴史を感じに、皆様もぜひライブへ足を運んでみてください。

取材にご協力頂きましたHardaway Corporation様並びにエンター・サンドマン様には、この場を借りて御礼を申し上げます。